- ベクターデータベースは、データを意味を捉えた数値の埋め込み(エンベディング)として保存し、キーワードではなく意味的な類似性に基づいた検索やレコメンデーションを可能にします。
- エンベディングモデルは、テキストや画像などのデータを高次元ベクトルに変換し、システムが同義語や文脈、アイデア間の関係を理解できるようにします。
- ベクターデータベースは、RAG(検索拡張生成)、パーソナライズされたレコメンデーション、テキストや画像を横断したマルチモーダル検索などの活用例を実現します。
- 意味検索を活用したAIエージェントの構築には、ユースケースの定義、プラットフォームの選定、データ準備、明確な指示の設定、そして関連性や精度を高めるためのテストと改善の繰り返しが必要です。
AIエージェントや検索エンジンを作ろうとしているなら、ベクターデータベースについて耳にしたことがあるはずです。
ベクターデータベースは、データ・リソース・クエリの連携に欠かせませんが、扱うのは難しく感じるかもしれません。私も経験があります。エンベディングやファジー検索といった専門用語を見て、過剰に複雑にしているのか、それとも基本を見落としているのか分からなくなったことがありました。
誰がYouTubeのおすすめ動画を決めているのでしょう?検索エンジンはどうやってタイプミスを乗り越えるのでしょう?Instagramがなぜいつも完璧なもふもふ犬を表示してくるのでしょう?
この記事では、ベクトル・類似性・意味検索の仕組みを解説し、よりパーソナライズされたアプリケーションを作る方法を紹介します。
ベクターデータベースとは?
ベクターデータベースは、データの意味を捉えた数値表現(ベクトルと呼ばれる)としてデータを保存します。これにより、特定のキーワードだけでなく、類似性に基づいた検索が可能になります。
ベクターデータベースは、現代のチャット、検索、レコメンデーションシステムを支える重要な技術です。
ベクターデータベースはどう機能するのか?
ベクターデータベースは、テキストや画像、スプレッドシートをベクトル(エンベディングとも呼ばれる)の連なりとして保存します。これらのベクトルは一見ただの数字の羅列ですが、内部的にはデータの抽象的な意味を捉えています。
このデータ(メール、会議の議事録、商品説明など)は、数字の列に置き換えられるのではなく、インデックス化されます。

このような小さく密度の高いエンベディングによって、情報の検索が効率的かつ意味のあるものになります。これにより、アイテム同士を類似性で比較できるようになります。
主要な概念
エンベディングモデルとは?
エンベディングモデルは、データをエンベディングに変換するために訓練された機械学習モデルです。
これらのモデルは、データをベクトル(エンベディング)に圧縮し、そこから元の情報を再現できるように学習します。圧縮されたベクトルには、できる限り多くの意味情報が詰め込まれています。
つまり、単語そのものだけでなく、その背後にあるアイデアも保存されます。例えば、エンベディングは次のような関係性を捉えます:
- 「puppy」と「dog」は密接に関連している
- 「How do I reset my password?」は「Can’t log in to my account」と意味が近い
- 「affordable laptop」と「budget-friendly computer」は同じものを指している
このようなパターンによって、AIエージェントや検索エンジンは、キーワードの一致だけでなく意味に基づいて入力を比較できます。
セマンティック検索とは何ですか?
では、埋め込みはどのように類似性を比較されるのでしょうか?
前述の通り、埋め込みベクトルは一連の数値です。これらの数値は高次元空間における一点を表現しています。2次元や3次元であればイメージしやすいですが、384次元ではどうでしょうか?X、Y、Zの代わりに何百もの値があり、それらが組み合わさって唯一の点を指定します。

これらのベクトルによって、2つのコンテンツがどれだけ「近い」かを測ることができます——単語ではなく、意味の観点で。
意味検索は、クエリをベクトルに変換し、データベース内で最も近いベクトルを探します。これらの結果ベクトルは、原則としてユーザーのクエリに最も類似しているはずです。

近似最近傍(ANN)検索
セマンティック検索は、近似最近傍(ANN)アルゴリズムを使って行われます。ANNの目的は「データベース内で自分のクエリに最も似ているベクトルはどれか?」という問いに答えることです。
ANNアルゴリズムにはいくつか種類があり、それぞれに強みがあります。例えば:
階層型ナビゲーションスモールワールド(HNSW)
HNSWはリアルタイムかつ低遅延な検索に最適化されています。パーソナライズされたコンテンツフィードやレコメンデーションシステムなど、頻繁にデータが更新される場面で活躍します。
インバーテッドファイルインデックス(IVF)
IVFは、大規模でほとんど変化しないデータに適しています。例えばECサイトのカタログや学術論文のディレクトリなどです。
実際には、どのアルゴリズムを使うかは検索を実装するエンジンやプラットフォーム側で隠蔽されています。
ベクターデータベースの活用例
ベクトルの生成とマッチング方法が分かったところで、実際にどのようにアプリケーションに活用できるか見てみましょう。
RAG(検索拡張生成)
このLLM生成戦略は最近よく話題になりますが、それもそのはず。RAGは信頼性が高く、正確で、具体的な回答を提供できるのはベクターデータベースのおかげです。
RAGでは、ユーザーのクエリがエンベディングされ、データベース内の類似アイテムと比較されます。モデルはこれらのアイテムを参照して回答を生成します。
RAGは、モデル内部の知識や会話履歴だけに頼るのを避けます。これらはしばしば誤りや無関係な情報を含みがちです。
例えば、ナポレオンの幼少期について要約を求めたとします。モデルの回答はもっともらしいですが、正確でしょうか?RAGを使えば、クエリに関連するドキュメントがモデルの回答を導くために利用されます。これにより、一次資料を確認でき、モデルの出力の検証が可能になります。
実際の動作を見てみたい場合は、RAGを使ったチャットボットの作り方ガイドをご覧ください。
商品・コンテンツのレコメンデーション
ベクターデータベースは、ユーザーのクエリへの回答だけでなく、ユーザー体験の最適化にも使われます。
ユーザーの閲覧履歴を追跡し、類似アイテムをクラスタリングすることで、最適な商品やコンテンツをレコメンドできます。
これは、いわゆるアルゴリズムの好例です。戦略的なコンテンツ推薦やターゲット広告などが該当します。
動画共有プラットフォームを例に考えてみましょう。各動画には独自のエンベディングがデータベースに保存されています。1本視聴すると、システムは近いエンベディングの動画を提案できます——タイトルやタグが全く違っていても、内容が似ている動画です。
時間が経つにつれ、視聴履歴はパーソナライズされた「エンベディングのクラウド」となり、システムはあなたの好みを理解し、次に見たいものを提案できるようになります。
従来型データベースに対するベクターDBの利点
ここまででベクターデータベースの仕組みや特徴が分かりましたが、なぜチャットボットや検索エンジンで使うべきなのでしょうか?
1. チャットボットにより多くの文脈を与える
LLMは長い会話の中で忘れたり、事実でないことを答えたりしがちです。どの情報が保持されているか、ユーザーも開発者も把握しづらいのが現状です。
RAGのような戦略を使えば、モデルはクエリに対して必要な情報をデータベースから検索し、正確な回答を導きます。
何度もモデルにリマインドや訂正をする代わりに、ベクターデータベースが関連情報を保存し、明示的に参照できます。

2. 検索結果がタイプミスに強くなる
正確なキーワードが分かっていても、検索は思い通りにいかないことが多いです。
golfen retriever ≠ golden retrieverですが、検索エンジンはそれを理解してほしいものです。
クエリを文字通り一致させるだけだと、タイプミスやスペルミスで関連する選択肢が除外されてしまいます。
検索クエリの意味を抽象化すれば、スペルや表現の細かい違いはそれほど重要ではなくなります。
3. ユーザーがあいまい検索を行える
検索はキーワードよりも ✨雰囲気✨ が重要です。
テキストを埋め込みベクトルに抽象化することで、言葉では表現しきれない雰囲気空間に保存できます。つまり、
「このあたりで美味しいフラットホワイトが飲めるお店は?」
は一見、
「近くでカフェイン補給におすすめの場所」
とは違うように見えますが、検索エンジンはどちらも同じようにマッチさせます。これは、2つのフレーズの埋め込みベクトルが非常に近い位置にあるため、表現が異なっていても一致するのです。
4. ベクトルDBは異なるモダリティ間の比較が可能
データにはさまざまな形や種類があります。異なるタイプのデータを比較したい場面も多くあります。例えば、テキストを使って商品画像を検索・絞り込みする場合などです。
マルチモーダルモデルは、テキスト・画像・音声・動画など異なる種類のデータを比較できるように訓練されています。
これにより、コンテンツについてより柔軟にやり取りできます。商品の画像を言葉で説明して探したり、グラフについて自然な言葉で質問したりできます。
スマート検索機能を持つAIエージェントの作り方
セマンティック検索が初めてなら、疑問がたくさん浮かぶはずです:
データの準備はどうすればいい?
どのデータを含めるべき?
どの埋め込みモデルを使えばいい?うまく動いているかはどう判断する?
幸い、最初からすべてを完璧に決める必要はありません。簡単なステップで始められます:
1. ユースケースを定義する
まずはシンプルで役立つものから始めましょう。例えば、こんな例があります:
- A 小売チャットボットは、お客様のニーズや好みに合わせて最適な商品を提案します。たとえば、「ハイキング用で150ドル以下のおすすめ冬用ジャケットは?」と聞いてみてください。
- A チケット管理ボット は、従業員のITリクエストをリアルタイムで振り分けます。VPNアクセスに関する未割り当ての高優先度チケットはありますか?
- A 業務プロセス自動化 エージェントは、注文の処理を最初から最後まで管理します。スミスさんの注文は発送済み?確認メールは送った?
これらはどれも短時間で構築でき、すぐにテストできて、即座に価値を発揮します。
2. プラットフォームを選ぶ
ベクトルデータベースが難しそうに感じる場合でも、チャットボットプラットフォームの多くは、埋め込みやクラスタリングを裏側で自動的に処理してくれます。
3. データを集める
まずは手元にあるテキストファイル、PDF、スプレッドシートなどから始めましょう。優れたプラットフォームなら、フォーマットも自動で処理してくれます。コンテンツをアップロードするだけで、埋め込みやインデックス作成は自動で行われます。
細かな部分は使うプラットフォームによって異なります。データを最大限活用するためのヒントも参考にしてください。
4. 説明文を追加する
ボットの目的を簡潔で分かりやすい言葉で説明しましょう。
これにより、ボットの話し方や想定される質問、参照できるデータの範囲など、トーンや期待値を明確にできます。
例:
「あなたは人事チームのサポートアシスタントです。従業員が社内規定や有給休暇、福利厚生について質問した際に、社員ハンドブックや人事関連書類の情報を使って案内してください。分かりやすく丁寧に対応しましょう。分からない場合は、ユーザーに人事部への問い合わせを促してください。」
5. テストと調整
実際の質問で動作をテストしましょう。顧客が尋ねそうな内容を聞いてみて、結果が適切か、正確かを確認します。

必要に応じてボットを調整しましょう:
- 回答が不十分な場合は、チャンク数を増やしてより詳細な応答を得ましょう。
- 応答が遅い場合は、より高速なモデルを選びましょう。
- 誤った回答が多い場合は、より精度の高いモデルを試すか、関連データを追加しましょう。
プラットフォームは高いカスタマイズ性があるため、モデルの選択や説明文の変更など設定を調整するだけで多くの問題が解決できます。
より賢い検索機能を構築しよう
AIの進化により、検索可能なデータは「あると便利」から「当たり前」になりつつあります。
ANNや埋め込みを極めなくても、より賢い検索エンジンは作れます。私たちのプラットフォームなら、セマンティック検索や検索拡張生成のツールがすぐに使えます。データ準備も不要です。
今すぐ構築を始めましょう。無料です。
よくある質問
1. ベクトルデータベースの性能はどう評価しますか?
ベクトルデータベースの性能を評価するには、クエリの応答速度(結果が返るまでの速さ)、リコールや精度(結果の関連性)、スケーラビリティ(データやクエリの増加への対応力)を測定します。実際のクエリでテストし、負荷時にも速度と精度の期待値を満たしているか確認しましょう。
2. 大規模なベクトルデータの保存要件は?
大規模なベクトルデータの保存要件は、ベクトル数と次元数によって異なります。例えば、768次元・32ビット浮動小数点で100万ベクトルなら生データで3GB以上必要です。数百万〜数十億規模になると数十〜数百GBが必要となり、圧縮や近似インデックスなどでコスト削減が重要です。
3. ノイズやモデルのバイアスで全く異なる文書が似た埋め込みになる場合は?
無関係な文書が似た埋め込みを持つ場合、検索システムが誤った結果を返すことがあります。これを防ぐには、埋め込みモデルをドメイン固有データでファインチューニングしたり、ベクトルとメタデータやキーワードフィルターを組み合わせたハイブリッド検索を活用しましょう。
4. ベクトルデータはどのようにバージョン管理され、時間とともに管理されますか?
ベクトルデータは、入力データや埋め込みモデルのバージョンを追跡して管理します。一般的には、タイムスタンプ付きのスナップショット保存やインデックスバージョンへのタグ付けが行われます。
5. 従来のキーワード検索とベクトル検索を組み合わせることは可能ですか?
はい、従来のキーワード検索とベクトル検索を組み合わせる手法はハイブリッド検索と呼ばれ、ElasticsearchやVespaなど多くのプラットフォームで対応しています。この方法では、厳密なクエリにはキーワード一致、文脈理解にはセマンティックベクトル類似度を使うことで、関連性を高められます。
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